為替市場の通貨間取引には「実需取引」と「投機取引」の2種類が存在します。
このふたつの取引の違いを理解すれば、長期的な為替のトレンドを把握するヒントになるかもしれません。
それぞれの特徴を簡単に説明します。
実需取引と投機取引の違いと特徴
投機取引は”取引による利益”を目的とした為替取引のことです。
安く買って高く売る、という為替差益(キャピタルゲイン)が目的の取引のことを投機取引と呼びます。長期保有の利息(インカムゲイン)を目的とした取引も、利益を目的としている点では投機取引といっていいと思います。
FXトレードは実需取引ではなく、投機取引ってことですね。
対して実需取引は”実際の需要”を基にした為替取引のこと。
輸入や輸出など、国家間の貿易による取引で発生したりします。個人が外国旅行に行くときに、円を旅行先の通貨に換えるのも実需取引の一つです。
アメリカで日本車が売れた場合、アメリカ人はドルを支払って車を買いますが、日本の自動車販売会社は円で受け取ります。つまり輸出では”ドル売り・円買い”の実需取引が発生することになります。
日本が資源国からいろんな資源を輸入する場合は、円でその国の通貨を買う必要があるので”円売り”の動きになります。
輸出が好調=円買い
輸入が好調=円売り
ってことですね。(これ大事!)
投機取引は必ず反対売買で清算しなければならない
実需取引と投機取引の大きな違いの一つに「反対売買の有無」が挙げられます。
投機取引(FXトレード)では、利益確定するにも損切りするにも、絶対に反対売買しなければなりません。買ったものは売って清算しなければならないし、売ったものは買い戻して清算しなければなりません。何年も長期保有していても、永遠にそのままにはしておけないのです。
ところが実需取引では、反対売買をする必要はありません。実需取引で円を売ったら、永遠にそのまま。円を買ったら、永遠にそのままです。よく考えれば当然ですね。
「反対売買の必要がない」というのはかなり重要。
為替市場でニュースが発表されて、急に円安が進んだとします。ここで発生した取引のほとんどは”投機取引”です。
そして投機取引は必ず反対売買で清算しなければならないという特徴を持っています。売買後に清算するまでの期間は、数秒後かもしれませんし、数か月後かもしれません。ですが、必ず反対売買は行われます。
この特徴が、為替市場の急落と急騰の理由の一つです。
為替が暴騰した直後に急落する、なんて動きはよくありますよね。
逆に実需取引は反対売買で清算する必要がありません。そのため為替市場への影響は微々たるものでも、取引が積みあがっていきます。それほどのインパクトはないかもしれませんが、じわりじわりと影響を及ぼすのです。
つまり、2国間の企業間取引で必要となる実需取引が、長期的なトレンドを形成する基盤となっているのです。
この実需の状況がどうなっているのかを判断するには、各国の貿易収支や国際収支を確認したり、週足チャートなどで長期のトレンドを予測するしかありません。
例えば日本の貿易収支が黒字の場合と赤字の場合、それぞれの為替への影響は下記になります。
貿易黒字=輸出が好調=円買い圧力が強い(円高)
貿易赤字=輸入が好調=円売り圧力が強い(円安)
もちろん、教科書通りの動きになるわけではありませんが、このような「為替の常識」を知っておくのは大切なことです。
実需を基にした長期トレンドの把握は、たとえ短期トレードがメインのFXでも、その戦略を考えるうえで大切になってくるのではないでしょうか。
*ちなみに毎月の経常収支は財務省のホームページで確認することができます。→財務省貿易統計「過去の報道発表資料」