2016年5月30日に安倍首相より「消費増税の2年半先送り」が発表されました。
世界経済がリーマンショック時代と同じくらい不安定で大きなリスク下になる、という理由からです。
先送りになったものの、2019年の10月から消費税10%になるのはほぼ確実なようです。
では、消費増税が実現した場合に、為替市場はどのような影響を受けるのでしょうか?
消費増税が為替に及ぼす影響とは?
一般的には増税を行うと国の収入が増えて財政が健全化されるので、その国にとっては好材料。
つまり、増税は円は買われる要因となる気がしますね。
株式市場でも自社製品の値上げが発表されると好材料になります。消費者側の視点から見ると「値上げ最悪や~」となりますが、投資家や経営者側からの視点だと収益の改善に繋がるため、その株が値上がりします。
一方で、消費税の増税は「ただ一企業の製品の値上げ」とはわけが違います。
消費税は消費者の購入意欲をそぎ、経済全体が低迷するリスクもはらんでいます。
景気が悪くなれば、円は売られる要因となります。
つまり、増税は円が売られる要因となる気がしますね。
いったいどっちなのか???
では、過去に消費増税が行われた際に、為替はどのような動きだったのか思い出してみましょう。
過去の消費税増税の時は為替はどうだったのだろう?
消費増税が3%→5%になったときの為替
消費税が3%から5%に増税されたのが、1997年4月1日です。この増税を決定した法案が、1994年11月25日の税制改革関連法案です。
為替チャートをさかのぼってみると、1994年11月25日以降のドル円は、円高ドル安の動きになっています。
1994年11月増税決定時は1ドル=99円。
↓円高ドル安
1995年5月には増税決定後最安値の1ドル=82円に。
↓円安ドル高
1997年4月消費税5%施行当時は1ドル=120円。
↓円安ドル高
1998年8月に最高値の1ドル=150円に!
消費増税が決まった時には、定石通り円高ドル安になっています。
ですが実際に実施されたときは、反対に円安ドル高になっています。
これは消費税増税による消費の落ち込みと経済の停滞の影響と考えられます。
では次に消費増税が5%から8%に引き上げられた時の為替を確認。
消費増税が5%→8%になった時の為替
消費税8%になることが決まったのが、2012年8月10日の「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための税法及び地方交付税法の一部を改正する法律(平成24年法律第68号)」です。
で、実際に消費増税が施行されたのが2014年4月1日。
2012年8月の増税決定時は1ドル=78円
↓円安ドル高
2014年4月に消費税8%施行。1ドル=102円
↓円安ドル高
2015年6月には最高で1ドル=125円をつける
増税の決定から実施、その後までず~っと円安ドル高。
これは恐らく、景気が悪くなるという懸念もありますが、安倍総理のアベノミクスで量的緩和がバンバン行われてことも影響していると思われます。
もし消費税増税後にさらに景気が悪くなったら、さらなる金融緩和の可能性もあります。
だとしたらさらに円安ドル高の流れが強くなる可能性もあるでしょう。
今後の消費増税では円安になる!?
最初に「消費税増税は円が買われる要因になる」と書きましたが、実際の為替の動きはまったくの逆。
為替には様々な要因が絡んでいるので一概には言えませんが、過去2回の消費増税を見てみると、消費増税はむしろ円安の一因になっているような気がしますね。
「消費者増税で経済全体の景気が悪くなる→円が売られる」
この流れです。
ともあれ、消費税の動向だけで為替を予測することはできないでしょう。
一般的に、増税は円高要因。
だけど、消費増税は円安の要因になる可能性が高い。
そんな感じではないでしょうか。
これからの為替は?
「世界経済の停滞」が2016年の消費増税延期の理由です。そして世界経済の停滞は明確な円高要因です。
これから日本で経済刺激策がいろいろと実行された場合、「量的緩和→円安」や「内需の増加→輸入の増加→円安」といった流れから円安ドル高の要因になる可能性はあります。
ですがイギリスのEU離脱騒動の中、世界経済の先行きはまだまだ不安定。
この状態が続くようなら。これからしばらくは円高の流れが続くかもしれません。
世界経済が不安定な時は円買い、安全な時は円売り。
消費税増税なんかよりも、はるかにダイレクトに為替を動かす要因になるでしょう。為替の動きを予測するためには、全体を見るということが大事なんですね。
為替の予測が難しいのもうなずけます。
消費者増税なんて何年も前から決まっていることだし、為替の動きはとっくに消費者増税を織り込み済みなのかもしれません。
ですが…
消費税が10%になった後、しばらくは円高ドル安の方向に動きやすくなるでしょう。
まあ、最終的な値動きは世界経済の影響を強く受けそうですね。